エーザイ
11年ぶりの2ケタ増収増益 「アリセプト」特許切れから復活の兆し
2019/3/25 AnswersNews編集部 前田雄樹・山岡結央
認知症治療薬「アリセプト」の特許切れから業績低迷が続いていたエーザイ。しかし、17年度は11年ぶりの2ケタ増収増益となりました。ピーク時に売上高5000億円を目指す抗がん剤「レンビマ」で、長く続いた特許切れのダメージから抜け出すことはできるのでしょうか。
長く続いた業績低迷 17年度は11年ぶりの2ケタ増収増益
エーザイの17年度の業績は、売上高6001億円(前年度比11.3%増)、営業利益772億円(前年度比30.7%増)でした。抗がん剤「レンビマ」の共同開発で提携する米メルクから契約一時金として受け取った3億米ドル(約320億円)が業績を牽引しました。
エーザイの業績はここ数年、底を這う状態が続いていました。ピーク時の09年度は売上高が8000億円を超えていたものの、直近5年間は6000億円前後で横ばい。同社は国内大手新薬メーカーのひとつに数えられていますが、上位3社には大きく水を開けられています。うしろからは、ロシュとの提携で業績を伸ばす中外製薬が17年度に5342億円まで売り上げを伸ばし、エーザイとの差を詰めています。
業績低迷の要因は、売り上げを支えていた主力2製品、認知症治療薬「アリセプト」とプロトンポンプ阻害薬「パリエット」の特許切れです。アリセプトは97年に発売した世界初の認知症治療薬で、ピーク時の09年度には3228億円を売り上げた超大型製品。パリエットと合わせると、一時は連結売上高の6割以上を稼いでいました。
しかし、両剤とも10年以降に各国で相次いで特許切れを迎え、12年度には両剤の売上高がピーク時の半分以下まで減少。この穴はあまりに大きく、その後も抗がん剤「ハラヴェン」「レンビマ」などの新薬を投入したものの、業績はなかなか上向きませんでした。
レンビマで米メルクと大型提携 アルツハイマーは開発の最終段階に
ようやく光が差してきたのは2018年。3月、米メルクと抗がん剤「レンビマ」の開発・販売で大型提携にこぎつけました。メルクの免疫チェックポイント阻害薬「キイトルーダ」とは、6つのがん(子宮内膜がん、非小細胞肺がん、肝細胞がん、頭頸部がん、膀胱がん、メラノーマ)の11適応で併用療法の臨床試験が進行中。すべての開発・販売マイルストンを達成できれば、エーザイはメルクから最大約6110億円を受け取る見込みです。
キイトルーダとの併用療法に加え、レンビマ単独でも世界の主要市場でメルクとの共同販促を開始。併用療法と共同販促を通じて、エーザイはレンビマの売上高をピーク時に年間5000億円まで伸ばしたい考え。業績回復を牽引する製品として期待をかけています。
がんとともに柱に据える認知症関連・神経変性疾患領域では、米バイオジェンとアルツハイマー病治療薬3剤を共同開発。抗アミロイドβ抗体アデュカヌマブと同BAN2401、BACE阻害薬エレンベセスタットはいずれも臨床第3相(P3)試験を行っており、20~22年にかけて主要評価項目の結果が判明する見通しです。
エーザイは現在の中期経営計画で、20年度に「ROE10%」「売上高8000億円以上」「営業利益1020億円以上」を目標に掲げています。18年度はROEが10%に達する見込みで、3つの目標のうち1つは2年前倒しで達成する見通し。19年度には営業利益の目標も前倒しで達成するとみています。
長く続いたトンネルの出口がようやく見えてきたエーザイ。一気に成長路線に乗ることができるのか。アルツハイマー病治療薬の開発の行方に注目が集まります。
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